東京地方裁判所 平成7年(ワ)23313号 判決 1997年11月11日
原告
伊藤禮子
被告
鵜野悟郎
主文
一 被告は、原告に対し、金八五五万四九九三円及びこれに対する平成二年三月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、二分して、その一を原告の、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一につき仮に執行することができる。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 原告
被告は、原告に対し、金二二七〇万七二一七円及びこれに対する平成二年三月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告
請求棄却
第二事案の概要
本件は、交通事故により損害を受けたとして、原告が、被告に対し、損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
(一) 日時 平成二年三月八日午後一時五〇分ころ
(二) 場所 東京都杉並区上高井戸一丁目八番先路上(以下「本件事故現場」という。)
(三) 被害者 原告
(四) 原告車両 普通乗用自動車(練馬五九ぬ一四九三)
(五) 加害者 被告
(六) 被告車両 普通乗用自動車(品川三三ら六九三〇)
(七) 事故状況 原告が原告車両を運転し、本件事故現場において、一時停止の標識に従って停車していたところ、被告運転に係る被告車両が、追突した。
2 責任原因
被告は、被告車両を保有し、自己のために運行の用に供していたのであるから、自賠法三条の責任がある。
3 既払金 三〇万〇〇〇〇円
二 争点
1 原告の主張
(一) 傷害の内容
原告は、本件事故により、頸部に強い衝撃を受け、傷害を負い、外傷性頸部症候群と診断された。
(二) 治療状況
原告は、本件交通事故による傷病の治療のため、次のとおり、入院及び通院を要した。
(1) 入院
久我山病院 平成二年五月九日から七月一一日まで
入院日数 六四日
(2) 通院
久我山病院、樺島病院、都立松沢病院、柴田整形外科、九段坂病院、東京医科大学病院及び中島カイロプラクティック等に通院した。
合計通院実日数 二八二日
(三) 後遺障害の程度
原告の傷害は、平成六年七月一二日に症状固定し、後遺障害別等級表第一四級一〇号に認定された。しかし、原告の後遺障害は、同表第一二級一二号に認定されるべきである。
(四) 損害
(1) 治療費等
(ア) 治療費 二〇四万四五八八円
(イ) 入院付添費 二九万四〇〇〇円
(ウ) 通院付添費 八四万六〇〇〇円
(エ) 入院雑費 八万三二〇〇円
(オ) 通院交通費 三二万八六八〇円
(カ) 薬代 二五万三九八七円
(キ) 倉地施術所関連費用 五三万八九八八円
(ク) 家政婦費用 二〇万八〇〇〇円
(ケ) 日仏学院授業料 五万八五〇〇円
(2) 休業損害 一〇二二万一〇九四円
休業損害の額は、以下のとおり算定すべきである。
基礎収入
平成二年賃金センサス女子全年齢学歴計 二八〇万三〇〇〇円
各期間の休業率
<1> 平成二年三月三一日から平成三年三月七日までの三四一日間 一〇〇パーセント
<2> 平成三年三月八日から平成五年三月七日までの七三〇日間 九〇パーセント
<3> 平成五年三月八日から平成六年七月一二日までの四二九日間 七〇パーセント
(3) 後遺症逸失利益 一六八万〇一八〇円
後遺症逸失利益の額は、以下のとおり算定すべきである。
基礎収入
平成二年賃金センサス女子全年齢学歴計 二八〇万三〇〇〇円
労働能力喪失率 二〇パーセント
就労可能年数 三年
(4) 慰謝料 四四五万〇〇〇〇円
(ア) 入通院慰謝料 一七五万〇〇〇〇円
(イ) 後遺症慰謝料 二七〇万〇〇〇〇円
(5) 小計 二一〇〇万七二一七円
(6) 既払金(争いがない。) 三〇万〇〇〇〇円
(7) 弁護士費用 二〇〇万〇〇〇〇円
(8) 損害額合計 二二七〇万七二一七円
2 被告の主張
(一) 傷害の内容について
原告が本件事故によって負った傷害は、比較的軽度な頸椎捻挫である。
(二) 損害について
原告主張の損害のうち、二ないし三か月の範囲内における治療費、休業損害等については、本件事故との相当因果関係を認めるが、右期間を超える費用については、本件事故との相当因果関係はない。
第三争点に対する判断
一 事故状況について
甲第一号証ないし第五四号証、乙第一ないし第一七号証(いずれも枝番号の表示省略)、証人伊藤猪一郎の証言及び原告本人尋問の結果によれば、以下のとおりの事実が認められ、これに反する証拠はない。
原告は、平成二年三月八日午後一時五〇分ころ、原告車両を運転し、本件事故現場において一時停止の標識に従って停車していた。被告は、被告車両を運転して、三〇ないし四〇キロメートルで進行していたが、前方に停止していた原告車両に気付くのが遅れて、あわててブレーキを踏んだものの、間に合わず、原告車両に追突した。原告車両は、一七ないし一八メートル前方に進んで、停止した。
原告は、本件事故により、頸部に強い衝撃を受けて、傷害を負った。
二 原告の治療の状況及び後遺障害の程度について
前掲各証拠によれば、次のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
1 傷害の程度及び治療の経緯
(一) 久我山病院
原告は、交通事故により、救急車で搬送され、久我山病院を受診した。主訴は、頸部痛と吐気であった。頸部レントゲン写真上は、骨の傷害は認められないが、第五、第六頸椎椎間板の狭小が認められた。頸部を安定させるため、ポリネックカラーでの固定治療を実施した。
その後、原告は、頸部痛、頭痛、吐気が一向に回復しないので、同病院に、入院して、治療を受けた。その治療内容は、主として、投薬及び点滴と頸部の固定であった。
入通院の日数等は、以下のとおりである。
(1) 平成二年三月八日から同年一二月一一日まで
実通院日数 二五日
(2) 同年五月九日から七月一一日まで
入院 六四日
(3) 平成五年三月三〇日
実通院日数 一日
(二) 樺島病院
原告は、頭痛、手、足に力が入らないことによる歩行困難等を訴えて、以下のとおり、樺島病院を受診した。同病院では、頸部傍脊柱筋、左僧帽筋に圧痛が認められた。
平成二年四月九日から同年一二月三日まで
実通院日数 九日
(三) 都立松沢病院
原告は、頸部痛、右顔面、右半身のしびれ、体調の不良等を訴えて、以下のとおり、都立松沢病院を受診した。同病院では、レントゲン写真により、第五、第六椎間板の狭小が認められた。
平成二年一二月一九日から平成六年五月二日まで
実通院日数 三〇日
(四) 柴田整形外科
原告は、以下のとおり、柴田整形外科を受診した。なお、原告は、頭部圧迫テストに耐えられず、受診を中断した。
平成三年四月一六日から同年七月一一日まで
実通院日数 四日
(五) 九段坂病院
原告は、項部の腫れ、頸部の運動制限と運動痛、首部から背中にかけての痛み、歩行困難、買物や掃除が困難であるなどの症状を訴えて、以下のとおり、九段坂病院を受診した。同病院で、第七頸椎棘突起を中心に腫れと圧痛、頸椎の運動制限(左右回旋、左右側屈、後屈のいずれも正常の約二分の一に制限されている。)が認められた。なお、原告は、頭部圧迫テストの過程で、気分が悪くなった。
平成四年四月一四日から平成六年六月二四日まで
実通院日数 九日
(六) 東京医科大学病院
原告は、任意保険会社の勧めに従って、下記のとおり、東京医科大学病院を受診した。
平成四年一〇月一九日から平成五年二月二六日まで
実通院日数 七日
(七) 整骨等施術関係
原告は、以下のとおり、接骨、整骨及びカイロプラクティック等の施術を受けた。
(1) 依田治療院
平成二年八月二〇日から同年一〇月一五日まで 一三回
(2) 福田接骨院
平成三年一月一九日から同年二月一三日まで 六回
(3) 斉藤整骨院
平成三年六月二一日から同年七月六日まで 五回
(4) 倉地施術所
平成三年七月二三日から平成四年六月五日まで 一四回
(5) 中島カイロプラクティック
平成四年一〇月二三日から平成五年五月一三日まで少なくとも 七一回
(6) 中島治療室
平成五年五月一八日から平成六年七月一二日まで 八五回
2 後遺障害の程度
(一) 原告の後遺障害に関し、診断書には、次のとおりの記載がある。すなわち、
(1) 平成五年一一月二日付けの九段坂病院整形外科の中川三与三医師の後遺障害診断書によれば、症状固定日を平成五年一〇月一九日とし、「傷病名」欄には「頸椎捻挫」、「自覚症状」欄には「頸部の痛み、頸部の運動制限と運動痛、両側の肩のコリと痛み、重い物が持てない(日常、買物ができない。)、二〇分位しか普通に歩けない」旨、「他覚症状及び検査結果」欄には「頸椎運動、後屈が二五度に制限される、後屈すると両側母指側にひびき、項痛著明となる、両側僧帽筋に筋硬結、圧痛がある」旨の記載がされている。
(2) また、平成六年七月二二日付けの同病院の同医師の後遺障害診断書によれば、症状固定日を平成六年七月一二日とし、「傷病名」欄には「頸椎捻挫」、「自覚症状」欄には「頸部が常に腫れ、頸の運動制限と運動痛がある、首から背中にかけて痛みがおこると、一〇分位しか歩けない、重い物が持てず、日常の買物や掃除ができない、右半分、右顔面にシビレがある」旨、「他覚症状及び検査結果」欄には「第七頸椎棘突起を中心に腫れと圧痛、両側僧帽筋に筋硬結、圧痛がある、頸椎の運動制限(左右回旋、左右側屈、後屈のいずれも正常の約二分の一に制限されている。)がある」旨の記載がされている。
(3) さらに、平成八年一月八日付けの東京都立松沢病院の山口武兼医師の後遺障害診断書には、症状固定日を平成六年四月二〇日とし、「傷病名」欄には「外傷性頸部症候群」、「自覚症状」欄には「右顔面のしびれ、右半身のしびれがある」旨、「他覚症状及び検査結果」欄には「右三叉神経領域の知覚鈍麻(軽度)、第五、第六頸椎椎間板狭小化、CT著変なし」旨の記載がされている。
(4) なお、平成六年三月二四日付け、及び平成七年四月二五日付けで、自賠責保険における後遺障害等級の事前認定において、原告の後遺障害は、一四級一〇号に認定されている。
(二) そこで、右各診断書の記載内容及び原告の治療の経過等に基づき、原告の後遺障害の有無及び程度を検討すると、原告には、第五、第六頸椎椎間板狭小化、第七頸椎棘突起を中心に腫れと圧痛、両側僧帽筋の筋硬結、圧痛、頸椎の運動制限(左右回旋、左右側屈、後屈のいずれも正常の約二分の一に制限されている。)があり、このため、本件事故後数年経過した平成六年七月一二日においても、頸部の痛み、首から背中に掛けての痛み、顔面のしびれという自覚症状があることが認められる。したがって、原告の後遺障害は、頸部等の局部に神経症状(後遺障害等級一四級一〇号)を残したものということができるが、局部に頑固な神経症状を残すものとまではいえない。
なお、症状固定の時期については、前記のとおり、九段坂病院整形外科の中川三与三医師は、平成五年一〇月一九日を症状固定日とする後遺障害診断書(甲五三号証)を発行しているが、原告は、その後も、同病院に継続して受診していること等に照らすと、原告の後遺症は、同医師の後遺障害診断書(甲一〇号証)どおり、平成六年七月一二日に症状が固定したとするのが相当である(もっとも、原告について生じた個々の損害額の算定評価に当たっては、後記判示のとおり、症状固定日を重視するのは相当でないということができる。)。
(三) ところで、久我山病院整形外科の溝畑隆男医師の回答書、及び樺島病院整形外科の医師の回答書には、それぞれ「頸椎レントゲン上骨傷は認めず、神経学的所見無」、「頸椎レントゲン写真上、外傷による骨傷はない」と記載されている。しかし、レントゲン写真における骨傷等の他覚的所見が認められないからといって、原告の前記後遺症に係る諸症状が存在していないということはできない。また、都立松沢病院整形外科の医師の診療録には、「緊張テスト異常なし、反射正常、ワルテンブルク、ホフマンテスト病的徴候なし」と記載されている部分がある。しかし、同診療録の他の部分には、前記のとおり、第五、第六頸椎椎間板狭小化、及び第四、第五頸椎に少しずれがある等の記載もあることに照らすならば、同病院の検査において、一部に異常がなかった旨の結果が示されたからといって、原告の前記後遺症に係る諸症状が存在していないとすることはできない。
また、久我山病院の吉武洋海医師の診断書には、原告が、心身症に罹患した旨の記載があることから、原告の前記諸症状は、専ら、心身症によるものと解する余地がないではない。しかし、同診断書には、「いわゆる外傷性心身症に類するもので、追突事故との因果関係が肯定される」旨、明白に記載されていることに照らすならば、原告が、本件事故後に心身症に罹患したこと自体が、本件交通事故の影響によるものであると推認され、したがって、原告の前記諸症状は、本件交通事故によって生じたことを否定することはできない(もっとも、本件交通事故による傷害について、回復が遷延した原因として、原告の心因的な要素が寄与したと解する余地がないではなく、本件事故と個々の損害との相当因果関係の範囲については、後に判示するとおりである。)。
さらに、原告が、事故前に通っていたスポーツクラブの「トレーニング日誌」には、「一五年前から椎間板ヘルニア」との記載がある。しかし、本件全証拠によっても、原告には、本件事故前に、本件事故後のような頸部痛等の症状があったことを認めることはできないこと、また、右記載に沿った既往症があったとしても、本件事故による原告の頸部痛、頸部の運動制限、運動痛の症状発生等に、右の点が影響を与えたものと認めることはできない。
三 損害額について
前掲各証拠によれば、次のとおりの事実が認められ、これを覆す証拠はない。
1 治療費及び諸雑費
(一) 治療費
(ア) 治療費 五九万九四〇九円
原告は、前記のとおり、各病院で治療を受けた。原告が負担した治療費六六万六〇一〇円(原告の請求する治療費には、入院付添費及び入院雑費が重複しているので、これを除いた。なお、右治療費には、被告が一部負担した久我山病院及び樺島病院に係る治療費分を含んでいない。)は、本件事故による治療のためということができる。しかし、右治療費には、本件事故から長期を経過した後の治療分も含まれていること、回復が遷延した原因として、原告の心因的な要素が寄与していた点を無視することはできないことに照らすならば、右治療費の九〇パーセントの範囲を、本件事故と相当因果関係のある損害と解するのが相当である。
666,010×0.9=599,409
(イ) 整骨、カイロプラクティック等施術費 一九万五四三六円
原告は、前記のとおり、平成二年八月から、整骨、接骨及びカイロプラクティック等の施術を受けた。本件各施術については、原告が医師の承諾を得た上で受けたものもあり、その有効性を否定することはできない。しかし、前記治療経緯、施術の時期、回数その他諸般の事情を考慮するならば、施術費用九七万七一八〇円の二〇パーセントの範囲を、本件事故と相当因果関係のある損害と解するのが相当である。
977,180×0.2=195,436
(二) 入院付添費 二四万五〇〇〇円
付添を必要とした日数四九日に、一日当たり五〇〇〇円の範囲で相当性を認めた。
(三) 入院雑費 六万四〇〇〇円
入院期間六四日に、一日当たり一〇〇〇円の範囲で相当性を認めた。
(四) 通院付添費 五万〇〇〇〇円
原告は、頸部の痛み、運動制限及び歩行困難等で、通院に支障を来していたこと、そのため夫の伊藤猪一郎が付添ったことが認められる。本件受傷の程度等一切の事情を考慮するならば、通院付添費のうち、五〇回、一回当たり一〇〇〇円の範囲に限り、本件事故と相当因果関係のある損害と解するのが相当である。
(五) 通院交通費 一一万一二三六円
(ア) 治療関係交通費 五万八五〇〇円
前記療費と同様の理由から、以下の計算式どおり、治療関係の交通費の九〇パーセントの範囲で相当因果関係を肯定した。
65,000×0.9=58,500
(イ) 整骨施術等関係交通費 五万二七三六円
前記整骨治療と同様の理由から、以下の計算式どおり、施術関係の交通費の二〇パーセントの範囲で相当因果関係を肯定した。
263,680×0.2=52,736
(六) 薬代
本件事故との相当因果関係を肯定することができない。
(七) 倉地施術所関連費用
滞在諸費用については、本件事故との相当因果関係を肯定することができない(なお、交通費は、前記(五)の(イ)の範囲内で一部を認めた。)。
(八) 家政婦費用
家政婦費用は、休業損害(後記判示したとおりの範囲で認めた。)に含まれていると評価すべきであるので、否定した。
(九) 日仏学院授業料相当額 五万八五〇〇円
本件事故により、原告は受講を断念した。授業料に相当する額は、本件事故と相当因果関係に立つ損害と解することができる。
2 休業損害 三六二万〇五三六円
原告は、本件事故当時、五九歳で主婦であったこと、前記のとおり、本件事故による傷害のため、頸部が常に腫れ、頸部の運動制限と運動痛が生じ、首から背中に掛けての痛みが起きるため、一〇分ないし二〇分位しか歩けないことがあったこと、重い物が持てないため、日常の買物や掃除に支障を来したこと等の症状が継続していたことが認められる。このような状況及び諸般の事情を総合すると、原告の休業損害の額は、平成二年賃金センサス女子全年齢学歴計(年額二八〇万三〇〇〇円、月額二三万三五八三円)を基礎収入として、各期間における休業せざるを得なかった割合を、次のとおり評価して、算定した額であるとするのが相当である。
(一) 平成二年五月から同年七月まで(入院期間)
二か月 一〇〇パーセント 四六万七一六六円
(二) 平成二年三月から平成三年一二月まで(入院期間を除く。)
二〇か月 四〇パーセント 一八六万八六六四円
(三) 平成四年一月から平成五年一二月まで
二四か月 二〇パーセント 一一二万一一九八円
(四) 平成六年一月から平成六年七月まで
七か月 一〇パーセント 一六万三五〇八円
3 後遺症逸失利益 三八万一六五六円
前記認定のとおり、原告は、本件事故のため、一四級一〇号の後遺障害を残した。原告の後遺症逸失利益の額は、平成二年賃金センサス女子全年齢学歴計(原告の主張どおり、二八〇万三〇〇〇円)を基礎収入とし、労働能力の喪失率を五パーセントとし、就労可能年数を三年(症状固定時六四歳から六七歳までの三年間)として、ライプニッツ方式により、中間利息を控除して、以下のとおり算定した額と認めるのが相当である。
2,803,000×0.05×2.7232=381,656
4 慰謝料 二七五万〇〇〇〇円
前記の入院及び通院の日数・経緯、治療の経過、後遺障害の部位、程度及び内容に鑑みれば、入通院慰謝料として一七五万〇〇〇〇円、後遺症慰謝料として、一〇〇万〇〇〇〇円の合計二七五万〇〇〇〇円が相当である。
5 小計 八〇七万五七七三円
6 既払金 三二万〇七八〇円
被告が、原告に対し、三〇万円を支払ったことは、当事者間に争いはなく、他に、二万〇七八〇円を支払ったことが認められる(さらに、被告は、直接病院等に対し、合計二四万四六二〇円を支払ったことが認められるが、原告は、これらを除外して請求しているので、既払金として、控除しなかった。)。
既払金を控除した後の金額は、七七五万四九九三円となる。
7 弁護士費用 八〇万〇〇〇〇円
事件の性質、難易及び認容額等一切の事情を考慮した。
8 損害額合計 八五五万四九九三円
第四結論
よって、原告の請求は、八五五万四九九三円及びこれに対する不法行為の日である平成二年三月八日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
(裁判官 飯村敏明)